風のむこうがわ|1967 初夏ーある日のスケッチー|ピキと少年
山梨県甲府市の普通科公立高校入試制度は、1968年に全県一区制から総合選抜方式へと準備不足の声をよそに2校でスタートした。選抜対象校は2校間から最大5校間で増減し、2006年度入試をもって全廃となった。
山梨県内において最も古い山梨県立甲府第一高等学校では、年一回の同窓会を33歳と50歳になる卒業生が当番幹事となって開催している。2003年の50歳当番幹事が35年前の初代総合選抜における入学生だった。
その当番幹事による2003年度同窓会誌は、テーマを「変革」とし創立123年の歴史を背景に総合選抜制度を多角的に検証。このための書き下ろし短編小説であり、架空の登場人物による史実に基づいたフィクッションである。
1967年、初夏。
「県内の伝統校」というコラムを担当することになった新聞社入社二年目の志郎は、休日の下宿先で「伝統」について考え始めるのだが、遅々として進まない。そこへ新米中学校教諭、朝子が現れる。高校卒業後五年ぶりの再会、さらに懐かしい面々が加わり、中学の教育現場で起きている混乱についての密談につきあわされる。見せられた議会議事録。道義に反する企てが、見え隠れする。
やがて戸外で事件が発生。警察署記者室で刑事から聞かされた事件の内容と結末。頭の隅で停止している「伝統」への手がかり。長く感じる一日。家路に着く足を止めた喫茶店。シャンソンに紫煙がゆれる。ふいに思考の時間が動き出した。初々しい社会人たちの一日である。
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