風のむこうがわ|1967 初夏ーある日のスケッチー|ピキと少年
子供の頃に観た「翼よ、あれがパリの灯だ」は、アメリカの飛行家、C・A・リンドバーグが、一九二七年、大西洋横断無着陸飛行に成功した当時の様子を映画化したものでした。
その中に、操縦室にまぎれ込んでいたハエが、飛行中居眠りをはじめたリンドバーグの頬にとまり、危うく墜落をまぬがれるシーンがありました。
こども心にハエの協力がなければ、あの栄光はあり得なかったとひそかに思いました。
時代は変わり、宇宙船の内部に巣をはるクモが、テレビ画面に紹介されたのは、つい最近のことです。
「上手に巣がはれるかな」その模様を見守った多くの人々の眼差しは、多分、やさしい心情に支えられていたことでしょう。
人工衛星が打ち上げられ、宇宙船が航行する今日、人の心はどこかに立ち止まり、機械化の進んだ状況を悲し気に見つめ、自分自身に問いかけることはないでしょうか。これでよいのだろうか、これでよいのだろうか…と。
ハエと少年の友情を通して、ともすれば忘れられがちな思いやりと、さらに、人間だけのすみかではない地球の人と生物のつながりを象徴的に考えてみました。そんな気持ちを理解して頂けたら作者として望外の喜びです。
最後に、高校時代からの友人、内記君がよくわがままを受け入れてイラストを担当してくれた事、編集その他本書全般への指導及び刊行一切に協力を惜しまなかった兄、技術的助言を与えて下さったヨネヤ印刷の清水社長等々、ここに記して深く感謝の意を表します。
昭和50年11月1日発行
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