福本義人監督と松田秀知監督といえば、みなさんご存知の人気テレビドラマを世に送り出した有名演出家です。タレント養成所の事務仕事をしていた時に両氏の仕事をお手伝いする機会に恵まれました。
両氏とご一緒できたのは、たった二年でしたが、実に多くを勉強させていただいたり考えさせていただけたことに感謝しています。
その一つに台本があります。
新しいドラマ製作の監督に指名され台本を渡される。(台本はB5判の冊子でおおよそ1時間ドラマで45~60ページ、2時間ドラマでその倍位)この台本を「最低30回は読みます」とこともなげに言われた時は、おもわず「えっー30回もですか?」と叫んでしまった。
ドラマの主人公、ヒロインをはじめ登場人物ひとり一人の俳優さん達に手渡されるシナリオ。20~50人で構成される制作スタッフ全員が、同じシナリオを片手にオンエアされるまでのドラマをゼロから創り上げてゆく様は傍から見ていると感動的です。
その何十人が関わる感動的な仕事も、まず監督がシナリオを読み込んでゆくことから始まるのだと理解していれば、「えっー30回もですか?」などとすっとんきょな奇声を上げて無知を露呈しないで済んだのですが…。
小学校時代、教科書6ページくらいの物語を「5回読んでくる」という国語の宿題があったのを思い出す。一度も宿題をやった記憶がないのも同時に思い出した。あの時、小学校の先生との約束を守っていれば、つまり宿題をきちっとしていれば、ドラマを創り出せるほどの想像力を身につけられたのだろうか…。
小説を読みながら無意識にしていること—はなしの筋を追いながら頭の中で映像に置き換えて楽しんでいる。これは小説の特徴の一つである描写にあり、読み手が無意識でも映像化できるほど、丁寧に書き込んであるからですね。シナリオの場合の描写は通常「ト書」とよばれる一行か二行のもの。
—女が入ってくる—
例えば前述のト書。何度もシナリオを読んでいるうちに「ドンナ女ガ、ドンナ風ニ、ドンナ表情デ」入ってくるのか必然性が生まれ、それを映像でどう見せるかを考える。例えばそのオンナをどの部位から撮るのか、またカメラの位置は?音楽は必要か否か。
たった一行でこんなに多くを考えなければならないドラマ。毎週54分-CM=45分もシーンが続くことを思うと監督の読んで想像し映像を創りだしてゆくエネルギーは大変なものだと感じる。監督によって同じシナリオから創り出される映像がまったく異なったものになることも、頷けます。
他人を傷つける言動、自己中心的な振る舞いなどが多くなりますね。
第三者の目で自分を観察する想像力がないと、社会の中で生活している自分自身を微調整できないしコントロールできません。さらに人間としての成長も期待できない。ということは感じる充実感や幸福感も大きな差が出てきてしまうということ。
想像力だけが全てではないけれど、想像力があれば、少なくとも非力な存在をいじめたりはしないはず。いじめている自分をカッコわるいと想像して、一つのイジメがなくなると、いじめないですんだ満足感といじめられない幸福感が二人の人間に生まれます。これが日本中の学校や社会の中で…と想像してみて下さい。
想像力ゆたかな君に変るためにシナリオを用意いたしました。
テレビドラマを制作する監督になりきり、配役や音楽、カメラワークまで考えながら何度も読み込んでください。時にはキャスティングした俳優さんの表情や仕草、セリフの言い回しまで指導するつもりで、頑張って下さい。
二、三作を読み込んだ後できっと新しい自分の存在に気づくはずです。想像力豊かな一まわり広くなった心をもつ自分との出会いを応援します。
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